特定調停は、債権者と債務者の間に裁判所から選出された調停員が入り、
交渉成立したものを書面化(調停調書を作成)し解決する方法になります。
任意整理は裁判所を通しませんが、特定調停からの債務整理は裁判所に通じた債務整理となっていきます。
こちらも、安定した収入がなければ交渉できない整理方法です。
交渉が全て解決するとは限らないものですので、交渉が不成立となる場合もあります。
目次
1.特定調停のやり方や流れについて
〇各弁護士・司法書士などの法律事務所に依頼する場合
債権者へ受任通知を送ります。
↓(各金融業者へ請求や取立てが止まります)
簡易裁判所へ申し立てをします。
↓債権調査:借り入れた金額の内容をそれぞれの金融業者から利用履歴を取り寄せて調べます。
簡易裁判所では、調停員の選出を行います。
↓調停委員の選出は、弁護士・司法書士以外の人がつく場合もあります。
債務確定:利息制限法に基づいて引き直し計算をして算出します。
↓(返済期間と返済額の計画:債権者との交渉がまとまるように計画案を出します。)
債権者と交渉:弁護士が債権者と交渉して決定します。
↓
返済の開始:各債権者との和解書を作成し決められた期日に返済を開始します。
全て弁護士が交渉しますので、相談者は弁護士と面談する際月々の返済額を決めるだけになります。
2.特定調停の費用について
各弁護士・司法書士の法律事務所に依頼をしない場合、個人で特定調停を行う場合の費用は、主に収入印紙代と郵便切手代がかかりますが、安価な費用で行うことができます。
申立書に貼る収入印紙は、交渉前なので借金の額がいくら減るのか確定していないので、1社につき500円の収入印紙を貼って提出しているのが現状のようです。
(各裁判所により異なる時があります)
特定調停をする金融業者の数だけ収入印紙が必要になります。
調停する金融会社が3社であれば、500円×3社=1500円+郵便切手1950円=3450円のようになります。
郵便切手が1450円は最低必要で、1社増える事に250円が増えていきます。
これも裁判所によって異なるようですので、問い合わせてから手続きしてください。
○弁護士など法律事務所に依頼した場合
弁護士など依頼する場合は、自由報酬になりますので報酬金額に違いが出ています。
ホームページなどで調べてから相談して依頼するようにした方が良いでしょう。
○特定調停に必要な書類
- 裁判所に提出する申立書(裁判所にあります)
- 印鑑(認印)
- 印紙代
- 郵便切手代
- 金融業者の一覧表
- 各金融業者の契約書(なくてもよい)
- 返済した時の領収書(残っていれば)
申立書は金融業者分の数×各2部必要になります。
各裁判所により、必要書類に違いがある場合がありますので、必ず裁判所に連絡を入れてから手続き書類を作成するようにして下さい。
3.特定調停ができない場合ってある?
特定調停は、返済期間が3年を目途に返済ができるか計算をして決定します。
債務金額の引き戻し計算をした後に収入から返済期間を考えますので、返済ができない可能性がある場合は特定調停ができません。
あと特定調停ができない可能性が強いのは、取引年数が短すぎる場合です。
引き戻し計算した金額と債務金額に差が出ない為、特定調停での解決に至らない可能性が高くなりますので、調停ができないというよりも解決をするには向いていない整理方法と言えるでしょう。
また、調停員は弁護士・司法書士だけとは限りません。
簡易裁判所で選出された調停員が一般の人である場合、債務整理の交渉能力が低い場合があります。
(弁護士・司法書士以外の選出もあります)
交渉する際に、債権者側の主張ばかりが通ってしまう恐れもありますので、債務者側の主張が通らない可能性もあります。
4.特定調停は代理人に代わってもらうことができる?
特定調停は必ず本人がしなければいけないので、代理人を立てる場合は弁護士または認定司法書士になります。
家族や夫婦でも代理人を立てることはできませんので、必ず本人が行うことが条件になります。
そもそも特定調停では交渉が成立しない場合もありますので、必ずうまくいくとは限りません
特定調停のメリットと言うと、個人で行う場合は費用がかなり安く済むことですが、交渉をする時は当然全て本人が行うので、交渉がうまくいかない時のことも考えていた方が良いでしょう。
いくら裁判所の調停員がいるとしても自分自身が法律に詳しくない限り、交渉を進めていく上で困難な状況になっても助け船がないので、交渉を成立に結び付けるためのものが必要になる場合があります。
調停費用が安く済むと言っても、内容は法律によるものを算出したもので減額交渉するのですから、
相手側にとっては納得のいく金額にはならないこともあり、全ての交渉がうまくいくとは限りません。
同じ作業を何度も繰り返すようなことになることも覚悟して、交渉に挑まなくてはなりません。
5.闇金の借金を特定調停で整理できる?
闇金は法律で認められていない金融業者です。
すでに、この時点で問題があるので元々闇金であるとわかれば、債務の返済は無効として扱い、すぐに弁護士に相談してください。
今まで返済してきた金額を逆に請求し、相手が応じなければこちらが裁判をして取り立てることになります。
ですから、特定調停ではなく逆に契約無効の返済請求として扱うものになります。
6.特定調停のリスクとは?信用情報が傷ついてブラックリストに載る?
特定調停は、個人でも申告できる上、弁護士に依頼する費用より断然安い費用ですが、申告する上での書類を揃える作業や借金の引き戻し金額を計算し、返済計画書を作成しなければいけません。
裁判所に提出する書類は多数ありますので、正確に書き記すことが必要になります。
最も重要な返済計画は、相手側が認められなければ交渉成立に至りませんので、交渉が成立しない場合、再度調停を申し出るか別の債務整理方法を考えなければなりません。
特定調停は、必ず一度で成立するとは限らない債務の整理方法になります。
○特定調停のリスクとは
- 引き戻し計算をしてもあまり変わらない返済額であると、調停をしても成立することは難しくなります。
(その時は、調停を取り下げることをしなければいけない可能性もあります) - 相手側が特定調停に応じない場合がある。
- 特定調停の返済期間が3~5年である為、返済金額が高くなり終了しない恐れがある。
- 返済ができなくなると差押えられます。
- 過払い金の返済金があっても取り戻すことができません。
- 事故情報として信用情報機関に登録されます。
- 交渉が成立しない可能性もあります。
- 遅滞損害金は調停中も止まりません。
このようなリスクがありますので、別の整理方法で考えることになる場合も含んでいます。
特定調停を弁護士に依頼する場合と、自分で行うことでは違いがあります。
○弁護士に依頼する場合
こちらも1度は裁判所へ出廷しなければいけません。
(調停委員が事情を聞く必要がある為)
全ての書類作成・手続きは弁護士がしますが、1社の依頼金額が高い。
(1万5000円からと各事務所により金額に違いがあります)
○自分で行う場合
最低2回は裁判の期日に出廷しなければいけません。
書類の不備がある場合は、何度でも裁判所から呼び出されます。
債務整理をする債権者が多く全ての債権者と調停をする時に、中々和解が進まなくて調停が長引き交渉の期間に差が出てくる場合もあります。
簡易裁判所に申立をしない限り請求は続きますので、申し立てをすれば裁判所から通知が行きますので請求は止まりますが、申立をしない限り弁護士のように受任通知ができません。
【遅延損害金と未払い利息について】
任意整理は、未払い利息や遅延金を除いた金額で和解交渉をします。
ところが、特定調停の場合は、調停を始めて交渉が成立した日までの未払い利息と、遅延損害金を含めた金額で支払い額を定めるようになりますので、すぐに成立すれば問題ないですが、相手側が異議を申し立てたりして成立しない場合は、遅延損害金が増え続けることになります。
(調停中の期間も遅滞損害金が止まることがありません)
そうなれば、債務者は調停を諦めて別の手段を取らざるを得ないことになり、2重の手間と時間と経費を使うことになります。
○弁護士・認定司法書士ともにあまり勧めようとしない整理方法です。
特定調停は、デメリットが多い整理方法なので、弁護士が勧める債務整理の中では極めて少ない方法になります。
弁護士・認定司法書士などは、「任意整理」を勧めることで遅滞損害金の発生を止めることができます。
特定調停の場合は、遅滞損害金が止まらないことや交渉成立に至らないことも考慮するために、特定調停を勧めることをしないことが多いようです。
自身で行う時にもこのような事を知らないで進めていると、金額の面でも高くつくことになりますので注意が必要です。
(交渉がすぐ成立した場合はいいですが、うまくいかなかった場合を想定しています)
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7.特定調停をした場合の保証人への影響について
特定調停をしても、連帯保証人に対して支払い義務が消滅するわけではありません。
債権者は特定調停を受けた時、連帯保証人に対して請求をすることができます。
連帯保証人が債務の一切を受けることになりかねませんので、連帯保証人にも伝えておくことが必要になります。
「任意整理」「特定調停」「個人民事再生」「自己破産」全てにおいて、連帯保証人に影響がないものはありません。
その債務整理をした時点で、債権者側は連帯保証人に対して一括請求が出来ますから、連帯保証人がいる場合で、「迷惑がかかるならやめた方が良い」と言う心理状況になる人が多く、相談者は債務整理をすることをためらいます。
弁護士に相談して見た時に必ず言われることは、連帯保証人の事を聞かれますし、対処法を聞くと連帯保証人も債務整理をしないと解決できないと伝えられます。
8.特定調停後に消費者金融やローンでお金を借りることはできる?
特定調停が決定したら、消費者金融・ローンでも完済してから5年間は借りることはできせん。
信用情報機関へ「事故情報」として登録されていますので、審査に通らなくなっています。
登録してから返済が完了後5年間は借りることができませんので、借りる事ばかり考えて生活する習慣を変えなければいけません。
借りなければいけない特別な理由がでた場合、すぐに弁護士に相談して下さい。
特定調停後は返済不能になってはいけませんので、そうなると給与などを差し押さえられることになります。
○ローン依存症にも注意が必要
「借りていると返さなければいけない」思いが強すぎて、借金がなくても借りなければ落ち着かないローンの依存症という症状に結び付いている場合があります。
嘘のような話ですが、実在する買い物の依存症と同じような症状になっているようです。
お金を借りる行為や物などを購入したことで満足感と達成感で満たされるので、生活をしていく上での存続感と位置付ける人のようです。
(ストレスの発散もあるようです)
そのような症状を持っている人は見分けがつきませんが、何かと買い物で生きがいを見つける人、飲み歩く・食べ歩くことで満足感と達成感を感じる人と同じように、それよりもさらに強く感じてしまうので依存症の行為をしてしまうのでしょう。
9.特定調停後にクレジットカードを持つことはできない?
債務整理の共通点は、制限される期間に違いがありますが、どれも「クレジットカード」「ローン」「保証人」など信用調査をされるものは全てできません。
ですから、特定調停が成立して完済した後から、5年はクレジットカードなどの申請やローンを申し込むこともできなくなります。
現金のみの生活に入りますので、「クレジットカード」「ローン」の事はしばらく忘れる方が良いでしょう。
10.特定調停後に支払いができず滞納した場合の対処方法
特定調停を成立してから、支払いが始まり途中で会社を辞めた時に、支払いができなくなった場合や特別な事情がある場合を除いては、成立した返済計画を守れなかったとして、債権者は給与や預金口座の差押えの処分を行うことができます。
特別な事情として、病気・事故・倒産・不当解雇などの理由がある場合は、その証明書などを提出して、休止延長の申し入れをしなければいけませんので、弁護士にすぐ連絡を入れてください。
(自分で交渉成立されたものについては、裁判所で再度手続きする必要があります)
返済ができない状態が続くようであれば、債務手続きを変更しなければいけない場合もあります。
11.特定調停後でも自己破産できる?
特定調停後でも、支払いができなくなったりすると白紙の状態に戻ってしまいます。
その時は給与や預金口座の差し押さえが行われますので、生活ができない困窮な状態に陥った場合、最終的な選択として自己破産をすることになりますので、破産をすることは可能になります。
調停が成立した後に返済が苦しくて生活まで支障がでる恐れがでた場合は、債務整理の変更をして「自己破産」を申立てて生活保護受給の申請をするようになります。
特別な理由がある場合は、弁護士に相談して債務の支払いを延長する手続きをしてもらうようにして、相手側の承諾を得られれば延長できる場合があります。
特定調停は、3~5年間の支払いに支障をきたすような状態にならない為の返済計画でないといけませんので、返済の正確さが要求されるものになります。
返済金が滞ることで、すぐに差し押さえられる権利が相手側に渡されていると思っていてください。
○楽をして手に入れたお金は大切にしない=借りたお金の重みが分からなくなる
自分で汗水稼いだお金は大切にするが、「人から借りたお金の重みはわからないから、最終的に身を亡ぼすことになる」と聞いたことがあります。
同じお金でも、自分が働くことで手にしたお金の価値は自分しかわからないものです。
昔の人は、楽をして物を得る方法は苦労を覚えない堕落した人間の象徴だとしていたからです。
実際、楽をしたお金を手に入れたことで金遣いが荒くなり、結局夜逃げするまで借金をした家族もいましたし、株や事業に失敗して一家離散した家族も多かったと聞いています。
○貨幣価値が変わっても「変わらない人間の物欲」がそうさせているのでしょう。
明治・大正・昭和の戦争体験後の物がない時に育った人は「楽をして物を得る事は罪悪と思うべし」「楽あれば苦あり」など、よく言っていた時代背景でもあり、事実そういうことになっているのが「借金」という言葉に象徴されているのでしょう。
「借りた金は返す」が基本で当たり前なのに、高利貸しというものが借りた人にとって苦になってくるのが、「借金」だと言っていた時代でしたが、今でも基本変わりはない時代です。
「借金」の良さと怖さを推進していかなければ、簡単に債務整理を考えてしまい債務計算を故意にすることで、自己再生を図る計算高い若者も多くなってきている世の中になってきましたからね。