自己破産者の制限は、職業に関するものと転居・国内・海外旅行などに影響があり制限されるものがあります。
自己破産の「同時廃止事件」とは別に、「管財事件」として手続きをしていた人は、職業に加え転居・国内外旅行などの制限がかかることがありますので、制限がかかった場合は許可を必ず受けなければなりませんので注意してください。
資格制限がかかっても、免責許可が下りるまでの間で、最長で6ヶ月の期間は制限がかかるもの全てができません。
目次
1.自己破産者の職業や資格の制限について
資格制限ができるものは、破産法によるもので定められていません。
資格制限は、取得要件の定めによる「個別の法律」で定められています。
自己破産手続きの開始決定から手続き中は一定の職業に就くことができない資格制限がありますが、免責の許可を受けることで、元の通りの資格が使えるようになることを「復権」と言います。
この「復権」を得るまでの数か月の間だけ制限がかかることになります。
○復権するまで使えない職業
「弁護士」「司法書士」「公認会計士」「税理士」「警備員」「宅地建物取引主任者」などの資格は、取得することができません。
資格を持っている人でも、破産手続きが開始されることによって、「復権」をするまで使用できなくなります。
○一定の手続きで資格が使えなくなる職業
「生命保険外交員」も復権まではこの資格を取得できませんが、資格を持っている人は、保険会社が「保険外交員の登録」の取り消しをしない限り仕事をすることができます。
○資格制限がつく仕事
- 「士業」
- 「貸金業者」
- 「保険募集」
- 「警備員」
- 「建設業(一般建設業,特別建設業)」
- 「後見人」
- 「損害保険代理店」
- 「廃棄物処理業者(一般廃棄物処理業者,産業廃棄物処理業者)」
- 「旅行業務取扱主任者」
- 「旅行業者」
- 「商工会議者会員」
- 「卸売業者」
- 「不動産鑑定士」
- 「通関士」
- 「中小企業診断士」
他の仕事では、資格制限がつくことになります。
しかし、公務員はというと「地方公務員」「国家公務員」「学校の教員」ともに資格制限はつきませんので、自己破産をするからといって公務員を辞めるようなことはしなくてもよいことになります。
(公安委員会など特殊な職は除く)
自己破産前に会社役員として就任している場合は、民法(会社からの委任契約にあたる)により自己破産をした場合は退任しなければなりません。
○民法での委任契約の終了とは
- 委任者・受任者が死亡した場合
- 委任者・受任者が破産手続き開始決定を受けた時
- 受任者が貢献開始の審判を受けた時
特別な取り決めがない限り、自己破産の開始の決定がされた時に、自動的に終了となります。
2.自己破産者でも起業することや役員に就任できる?
今までは、起業することや役員に就任することができなかったのですが、2006年以降から法律が改正されて、自己破産者でも起業することや役員になることができるようになっています。
但し、職業上の欠格事由にあてはまる場合は、起業できないものもあります。
欠格事由:弁護士・司法書士・不動産鑑定士・税理士・公認会計士・宅地建物取扱主任者です。
*部分的な職業に就くことができませんが、「復権」されれば解消します。
○破産後の起業をするのは、融資に関しての期待は持てない
起業を考えるにしても、破産して間もなくする場合など融資を考えているのであれば、難しいことになるでしょう。
融資を受けられるようになるまでの期間が、最低でも5年以上かかることになりますので、
それまでの間は、他の仕事でもしながら十分な計画を立てておくことになるでしょう。
しかし、破産者でも起業して成功した人はいます。
世の中には、自己破産をバネにして再起し成功を遂げた人は多くいます。
破産した理由を深く追求し改善する努力を重ねた人に多くみられていますので、努力を積み重ねていく前向きな姿勢が大切ですし必要なことです。
自己破産者は、人間失格くらいの落胆な気持ちや負のイメージばかりが頭の中を駆け巡ることでしょうが、新たな再出発や今後の人生設計を考えてみれば、その為に自己破産というものがあるのだということも忘れないでください。
3.自己破産者の復権について
自己破産をすると資格制限がつくことになりますが、破産手続きが終了しても、資格制限だけは消滅しないものなので制限を解除する必要がでてきます。
この解除する制度を「復権」といいます。
「復権」とは、失われた権利を元の権利に取り戻すことを指しています。
「復権」には、「当然復権」「裁判による復権」の2つがあります。
○当然復権
資格制限の解除が認められるもの
- 免責許可が決定し確定した時
- 破産手続きと同時廃止決定が確定した時
- 再生計画の認可決定が確定した時
- 破産手続き開始決定後、詐欺罪や破産罪の有罪判決を受けていない事と、10年以上過ぎた場合
○裁判による復権
破産者が債権者に対して弁済方法やその他の方法により、債務責任が免れた時に破産者が申立てすることで、裁判で復権が認められる場合がありますが、必ず認められるとは限りません。
復権することで、再度資格を失った職に就くことができるようになります。
4.自己破産者でもクレジットカードは持てる?
自己破産者は、破産決定の日から最長10年間クレジットカードを持つことはできません。
これは信用情報機関に「事故情報」として登録されているので、審査が通らないようになっています。
その期間が過ぎることで消滅しますので、申し込みが可能になります。
一番登録が長い個人信用情報機関は、銀行系ですので最長期間として記載していますが、他の信用情報機関は、7年で消滅するようです。
クレジットカードやローンの申し込みと保証人にはなることができませんが、日常生活においての不便さを感じるようなことは、現金主義で生活すればよいことですからそんなにないはずです。
【自己破産後にどんな融資やカードなら作れるの?】
自己破産をしてしまうと、全て何もカードや融資ができないわけではありません。
カードは分割ができないだけで一括払いのみのカードなら作れます。
何かどうしても借りなければいけない事情が生じた時は、銀行融資や・信販などの借り入れはできませんが、政府機関(国民金融公庫)等の融資は受けることができるようです。
ETCカードもパーソナルカードが保証金を入れることで作ることができます。
デビットカード:預金口座に入っている預金金額だけ使えるカードです。
VISAデビットカードも審査なしで作れますので、ネットなどの買い物などで決済ができます。
このように、現金を口座に入れておくことで口座に入っている金額分が使えるシステムであれば、現金を持っていることと何ら変わりがないということになります。
現金主義にならざるを得ないのは仕方のないことですが、それが一番良いことであることに間違いはありません。
*但し、破産をしてすぐに手続きをするのは、やめておいた方が良いでしょう。
せめて1~2年期間をあけてから手続きすると良いのではないでしょうか。
【企業はクレジットカードの所有を確認することで、信用調査を省いている?】
今はクレジットカードを持っていることが、ブラックではない証明として、信用調査を省き顧客獲得のために提示を求めてくるところが多く出てきました。
(クレジットカード所有者)
- 信用情報確認の手間が省ける
- 利用実績がすぐに確認できる
- 顧客の獲得と売り上げアップを図ることができる
以上の点で多くの企業がクレジットカードを持っていることで、信用と顧客の獲得をしているようです。
ある意味、カードによる社会化が発展して表に出るようになり、一つのステータスにもなっています。
個人データの簡略化を目指す反面、信用調査の円滑化も図られていますが、個人情報の漏えいが気になる人はカードを持たず、何らかの事情でカードを持てない人にとっては不便なシステムになります。
これから始めろうとしているマイナンバー制度も、カード社会に入るようになってきます。
どこまで、マイナンバー制度が発展して国民全員がマイナンバーカードを利用するかは未定ですが、問題が多く残ったまま今回の船出になることは間違いないでしょう。
5.自己破産者でも銀行口座は開設できる?
銀行口座の開設では、身分証明があれば収入証明のようなものを提示することはありませんので、開設は容易にできます。
銀行での借り入れをするとなれば、10年間は借りることができません。
クレジットカード機能付きカードも同じで申し込みはできません。
銀行口座の開設は、全ての金融機関で可能ですので、気にする必要は全くありません。
自己破産前の取引銀行は新たに開設するのは止めて、新しい取引となる新規開設する銀行を選んで、給与振り込みなどを行うようにした方が良いでしょう。
自己破産で凍結されたりしたことのある銀行は、データが残っているので自己破産後同じ銀行で口座を開設するのは、すぐに履歴がわかってしまうので止めておいた方が良いでしょう。
6.自己破産者の賃貸契約について
賃貸契約にもクレジットカード決済による契約も増えてきていますが、今のところ心配はいらないと思いますが、賃貸契約に関して気を付けることがあります。
今の賃貸契約をする時の形態がありますので、契約方法を確認してから行いましょう。
- 家賃の引き落としをクレジットカードで引き落とすような形態をとっている不動産屋の賃貸契約
- 従来通り保証人を付けて契約する方法
- 別途保証料を支払って、保証人を付けない契約をする方法
などの契約方法があるようです。
最近では、クレジットカードで家賃を引き落とす方法で、賃貸契約を結ぶ不動産業者も多くなっています。
自己破産を含めて債務整理をしている人は、クレジットカードでの契約はできませんし、保証会社が認めれば契約できるものも、個人情報登録されているので契約はできないので、契約形態を確認しておくと良いでしょう。
保証人が付いてくれる契約や保証人がいらない契約はできますので、賃貸契約をする前に契約内容にクレジットカードの引き落としや保証会社が入っていないかを聞いてから、物件の詳細に移る方法をとると良いでしょう。
今は、保証人がいなくても契約できる賃貸物件も多くなっています。
【保証人になれないのは、自己破産者だけではない】
大学入学する際、学生のお子さんが契約する時など自己破産者でなくても、債務整理をした人も含めた延滞などによることで親が個人情報登録をされていると、奨学金の保証人や賃貸契約の保証人ができないことも多くあります。
お子さんが小さい時に自己破産をした場合でも、10年経つと教育費の問題が出てくると思います。
自己破産だけが登録期間が長いので、忘れかけた頃が消滅期間になっていればよいのですが、保証人の問題が出てくるまでに消滅していればいいですが、登録期間だけが気になるところでもあります。
自己破産をしても、住民票に記載されていませんので、「官報」を引っ張り出して細かく確認しない限り一般の人にはわかりません。
7.自己破産者でも保証人になることはできる?
クレジットカードの申し込みと同じように、最長10年間は、保証人になることができません。
しかし、家賃の引き落としでクレジット決済がない場合や信用情報機関の調査がない場合は、保証人になることができます。
「奨学金を借りるための保証人」や「賃貸住宅の保証人」など、あとは本人もそうですが、お子さんの「携帯電話の分割購入の際の保証人」にもなれません。
携帯の分割購入をする際に、信用情報機関へ調査されるので一括で購入する事しかできません。
【気を付けるのは、携帯の通信費まで免責を受けたりすると携帯会社に残っていること】
自己破産をした時に携帯の通信費までも免責した場合は、携帯会社のリストから何年たっても外れないということがあるそうです。
そのような人は、携帯の通信契約すらできない状態になりますので、携帯の通信費は免責せずに支払うほうが良いでしょう。
8.自己破産者は旅行にいける?海外旅行はどう?
自己破産者は国内旅行・海外旅行ともに行くことは可能です。
但し、「管財事件」の場合で処分する財産がある時などは、一時的に制限されることはありますが、手続き中でも裁判所から許可を受ければ問題なく国内・海外旅行へ行くことができます。
(国内旅行でも長期(5日間以上)の場合は許可がいります)
*但し、裁判所の許可なく長期の旅行や海外旅行へ行くようなことをすると、破産法で1年以下の懲役または5万円以下の罰金を受けることになるので、必ず許可を受けてから旅行にいくようにして下さい。
9.自己破産をすると戸籍や住民票などにも記載される?
自己破産をする人が心配する一つに、戸籍や住民票の記載について気にされる人がいます。
自己破産をしても、「戸籍」「住民表」「免許証」「パスポート」などに記載されることはありませんので心配はいりません。
但し、本籍地の市区町村の管理する「破産者名簿」には一時的に載ることになりますが、破産手続きが終了すると削除されます。
「破産者名簿」は、一般の人が閲覧できるものでもありませんのでこちらも心配はいりません。
金融関係者が見る「官報」と一時的に「破産者名簿」だけに記載される他は記載されることはありません。
10.金融会社や闇金融のチラシにも注意が必要
自己破産をすると「官報」に載りますが、その「官報」を見て破産者にキャッシングのチラシなどを送りつけてくる金融会社がいます。
闇金と言われる法律で認められていない金融業者もその中にあり、よくこの手を使って破産者の自宅に送りつけてくるようですので、生活が苦しいからと手を出さないようにして下さい。
それ以上、苦しい目に合うことになりますので、しつこいチラシが送りつけてくる場合は、
弁護士に連絡して対処するようにして下さい。
自ら電話をするようなことやその業者に対して書類を返送するようなことは、絶対に避けてください。
(闇金ではなくてもしてはいけません)
自己破産をした後に、破産者にはこのような事がありますので注意してください。