債務整理をする手段の中で「収入がない・見込めない」などで、どうしても他の債務整理ができないという時の手段が「自己破産」です。
自己破産は誰でも嫌な債務整理ですが、何でも認められる整理方法ではないことも知っておくことが大切です。
自己破産をする場合も、免責の条件などがあり全てが認められるとは限らない債務整理です。
「免責」が「認められるもの」と「認められないもの」は何かを挙げてみたいと思います。
目次
1.自己破産の免責不許可事由について
自己破産をすることは「破産」と「免責」の2つが認められることで解決します。
つまり、破産だけが認められても「免責」が認められなければ自己破産をする意味がないことになりますので、「免責」はとても重要なことになります。
○「免責」とは
自己破産をする場合、裁判所から先に「破産宣告」が認められると、同時に「免責」を申立てします。
裁判所から「破産宣告」の決定を受けた後に「免責」の申立てが認められたことによって、借金が0になることを指します。
○自己破産の免責が認められないことを「免責不許可事由」といいます
これに各当すると「借金を0」にすることが認められないとするものです。
◎免責の不許可事由は以下の通りになります。
★自己破産の免責不許可事由
- 財産を隠す行為や財産物を壊すなどしてその価値を下げる行為
- 著しく不利益な条件で負担することや処分する行為
- 特定の債権者だけに特別の利益を与えたりする行為(弁済期日前に弁済する行為など)
- 浪費やギャンブルなどにより、大幅に財産を減少させてしまい大きな借金を負担した場合
- 破産を知りながら相手を騙す信用取引などで財産を得る行為(破産決定の1年以内)
- 財産に関する帳簿などの書類や物件を隠し偽造・変造する行為
- 裁判所に虚偽の債権者の申請・陳述書の提出・破産経緯などに関する虚偽する行為
- 不正手段による破産管財人の職務妨害をする行為
- 過去7年以内に免責申立があったこと
(免責許可の確定があった日・再生計画の認可確定の日・免責が確定した日) - 破産法の規定違反が破産者にあったこと
などがあります。
上記のようなことがありますが、よほど悪質でない限りは債務者の事情や裁判官の裁量などで、認められることが多いことも事実あるようです。
2.自己破産の免責の範囲は?非免責債権は何?
「非免責債権」になると「免責」が認められないので、その債権は返済を続けることになります。
○自己破産は免責が認められない「非免責債権」と言うものがあります。
★租税や・固定資産税
- 住民税・市民税などの税金
- 健康保険税・年金・一部の下水道代金
上記、滞納しているものも含みます
★罰金・損害賠償など
- 罰金・科料・刑事訴訟費用・追徴金など過料の請求権
- 交通事故:重過失交通事故損害賠償請求
◎離婚
- 妻からDVなどを起こした夫に対する慰謝料
- 妻から夫に対する養育費の請求
★雇用関係に基づく使用人の請求権
- 従業員や労働者に対する給与などの賃金
- 積立金
★債権者名簿に記載しなかったもの
- 故意に債権者名簿に記載しなかったもの
以上のものは全て非免責債権になります。
○罰金や損害賠償でも免責が認められる場合があります。
★免責が認められる場合
- 交通事故:一般的過失による交通事故の損害賠償請求
- 離婚:妻から夫が浮気したことに対する慰謝料
は免責として認められます。
3.自己破産で公共料金は免責される?
公共料金「電気料金」「ガス料金」「水道料金」の「滞納」は免責に入りません。
破産決定後も追加された利息も含めて支払い続けなければいけません。
自己破産の免責が認められないものが、一部の水道料金の下水道料金が含まれています。
自己破産をする場合、免責に下水道使用料は入っていないので支払う必要がでることがありますが、自己破産をする場合には、公共料金などを先にどれくらいの滞納があるのかを調べますし弁護士から聞いてくるでしょう。
4.NHK受信料は自己破産で免責される?
NHK受信料は免責されます。
自己破産をする際、債権者一覧表を作成しなければいけませんので、そこへ記載すれば免責の対象として認められます。
NHKの受信料で長期滞納されている人は、その最終の支払い日より滞納期間が5年以上経過している場合は時効になっています。
5.自己破産の免責が確定するまでの期間は?
自己破産の免責が確定するまでの期間には、財産がある場合とない場合で違いがあります。
財産がある場合は、裁判所より破産管財人が選定されて財産調査をする時間を要する為です。
財産の多さによりますが、免責確定まで約1年の期間がかかると言われています。
財産がないと認定されていれば、その約半分の半年(6ヶ月)で免責が確定され終了することになります。
自己破産は免責が確定した日が官報へ記載されます。
○自己破産の誤った理解があるようです
自己破産をしても下記のようなことはありませんので、これもよく知っておく方が良いでしょう。
- 自己破産をしたことで、選挙権に制限がでることはありません
- 自己破産をすると、市区村町役場の破産者名簿に登録されますが、一般の人が閲覧することは役所の一部の人しか管理していないので一切見ることはできません
- 記載期間も「免責が許可されると抹消」されますので残ることはありません
- 役所が管理する身分証明書にも記載されますが、本人しか取り寄せることができませんので、これも「免責が許可されると抹消」されます
- 自己破産をしたことで「住民票」や「戸籍」に記載されることは一切ありません。
それほど神経質になって周囲を気にすることはありません。
以上のことをよく間違った理解をされている人がいます。
安易に自己破産を考えている人もいれば、自己破産をすると誰からも知られてしまうような神経質になる人もいるようです。
「官報」「信用情報機関」などに記載されるところでは一般の人が閲覧することはありませんので、金融関係のごくわずかな関係者が確認する時に利用するものです。
(悪質な金融業者や闇金も含めて情報が流れることはありますが・・)
6.免責は連帯保証人にも効果がある?
自己破産の「免責」は破産者である本人だけですので、連帯保証人は全く関係がないことになります。
自己破産をすることにより、連帯保証人がその債務を全て引き継ぐことになります。
連帯保証人に債務が移ると債務者に代わりますので、返済方法を考えなくてはなりません。
分割で返済する方法を取るのか、連帯保証人も返済ができずに免責をするのであれば、同じ債務整理をすることになります。
7.2回目の自己破産でも免責は認められる?
自己破産を弁護士に依頼すると過去の債務整理の経緯を聞かれます。
過去7年の間に自己破産の経験がある場合は、その時に免責が認められているのか確認されて、今回と前回の破産の状態は何が原因で破産するのかが問題になってきます。
前回と同じ内容であれば、今回の免責は難しくなることもありますし、別の件で破産する原因にでも故意に破産していると認められて免責ができないこともあります。
自己破産が2回目となった場合、1度目の自己破産以上の事情が最重要視されます。
免責が認められる場合もあるようですが、裁判官の判断に委ねることになりますので必ず免責が出るものではありません。
最初の自己破産で免責が認められていない場合は、2度目も認められない方の確率が高くなります。